■ザ☆中忍 7
総菜を片付けてさっとシャワーを浴びたカカシは風呂場でイルカの服を風遁を使い急いで乾かした。そしてベッドで緊張感まるだしで待っていたイルカに笑顔で服を差し出した。
「え? アニキ、しねえんですかい?」
「するよー。でも、イルカ先生、いきなりパンツからってのは色気なさすぎでしょ」
「どういうことっすか?」
わからない、と顔をしかめるイルカに近づいて、耳元で低く囁いてやった。
「俺が脱がしたいから、一旦、服着て。ね」
ついでにそろりと耳を舐めあげれば、ぶるっと震えたイルカが、あ、とかわいらしい声を上げた。一気に腰にきたカカシは恐ろしい早さでイルカに服を着せた。
脱がせるために……。
午後からサスケの修行につくために出かけなければならない。一昨日の夜にイルカと結ばれたばかりのカカシにとって、それははるか遠いところに旅立つほどの気持ちだった。
はあと重苦しいため息を落とせば、なぜか上忍控え室にいたガイが顔をのぞきこんできた。その暑苦しい顔も今のカカシにとって許せるものだった。
「どうしたのだ。サスケの修行は大変なのか?」
「ん〜。そのことじゃないよ。イルカ先生としばらく会えないのが寂しくてさ」
「どういうことだカカシよ」
イルカのアニキのポジションをカカシが受け入れていることはガイも知っているが、それだけでは深いため息の理由にはならないだろう。
ちょうどいい機会だと、カカシはむふふと笑う。
「実は、イルカ先生とお付き合いすることになってさ」
「なんとっ!」
ガイは大袈裟にのけぞった。
「いつの間にそのような展開になったのだ」
「ついこの間かなあ」
どうしても顔がにやついてしまう。そして付随してよみがえるのはあの夜のこと。
イルカは、めちゃくちゃよかった。
病院での夜からその片鱗は伺えたが、普段とのギャップがそそり、必死でカカシについてこようとする姿がまたたまらなかった。体中触って嘗め回してしまった。もうダメだと嫌がるイルカを押さえつけて朝まで離さなかった。いや、離すことができなかった。
だがもちろん簡単に事が進んだわけではない。
童貞だから初めてだからと結局イルカは往生際の悪いことを言ってカカシを焦らした。初心者のくせになかなかやるなと余裕をかましていたのはものの数分だ。
上着をなかなか脱がせないイルカにカカシは切れた。
「イルカ先生ってヤンキーだったわりには度胸がないですよね」
小馬鹿にすればイルカはカカシを押し返していた腕を止める。ここだ、とばかりにカカシは言い立てた。
「初めてだ童貞だってさっきから言いますけどね、俺だって初めてなんですよ? 童貞なんですよ? 失敗したらどうしようとか思わないわけじゃないけど俺は覚悟決めてます。それなのに、イルカ先生ときたら……」
そこで間をおいて、あえて身を起こす。ちらりとイルカを見下ろして、肩を竦めた。
「てんで駄目ですね。小さい小さい。なーにが木の葉赤い稲妻第十代総長ですか。ちゃんちゃんらおかしいってもんですよ」
その途端、くわっと目を見開いたイルカは起きあがってカカシを押し倒した。
「いくらアニキでもそれ以上バカにするのは許さねえ。俺はやるときゃやる男だってとこ、見せてやろうじゃねえか!」
思い切りよく上着を脱ぎ捨てたイルカにカカシはほくそ笑んだ。
まあそれからは進むことができた。
イルカの中に入るには苦労したが、なだめてかわいらしいあそこをたっぷりかわいがって何度か吐精させ、力が抜けたところをずんと押し入った。
痛いよお……と舌足らずな声でしがみつかれた時にはカカシの脳裏は真っ白になった。情けないがイルカの中で早速少しばかり漏らしてしまったが、まだまだと腰を使った。
後ろのほうですぐに快楽を得ることができずに子供のように泣くイルカがかわいそうだったから、早く終わらせなければと思った。思ったが、歯を食いしばりつつもカカシの動きを助けようと体の力を抜こうとするイルカの健気な姿が愛しかった。すぐには開放できないと自覚したカカシは動きをゆるゆるともどかしいくらいのものにして、ゆっくりと責め立てた。イルカの萎えた中心にも手を伸ばしてやった。
しばらくするとイルカのそこは力を得て、後ろの痛みも耐え難いものではなくなったのか、ほうと熱い息をついた。
ぎゅっと瞑っていた目を開けると、真っ直ぐにカカシを見つめてきた。泣き濡れた目で、それでも柔らかく笑った。
「気持ち、いいっすか、アニキ」
カカシのことを気遣う言葉に、があっと体中が熱くなった。
「あっ……!」
中に入っていたカカシも膨れあがる。イルカはいやいやをするように首を振るが、もう堪らなかった。イルカのことをかき抱いた。
「すごく、いい。イルカ先生、俺、気持ちよすぎて、死にそう……あそこも、溶けそう……」
そこからはもう駄目だった。
イルカを最低限気遣いつつも、動きは激しさを増し、最後には失神させてしまった。
翌日任務があったカカシはイルカを残していくことが心配だったが、深く眠るイルカの額にキスをひとつ落として任務に赴いたのだ。
「いやあ、俺もまだまだ若いねえ」
両手で頬をはさんできゃーと高い声をあげて若い娘のように首を振る。
ガイが少し距離をとったのはこの際気にしない。首をかしげながらもガイは呟いた。
「まあ、幸せそうでなによりだな。今度イルカに会ったらおめでとうでも言っておこうではないか」
出かける前にひとめイルカに会って、なにより体は大丈夫かと確かめたかった。
アカデミー職員室に行けば、イルカの同僚が、倉庫に荷物をとりにいっていると教えてくれた。待てばいいのだが、とにかくすぐにでもイルカに会いたくて、アカデミーの体育館の裏にある倉庫に向かった。
中忍選抜試験が終われば、イルカとゆっくりできる。もう少しだと、夏の熱気の風に吹かれてもカカシの機嫌はよかった。
体育館の角を曲がったところで、ちょうどイルカとかちあった。イルカは両手に大きな紙袋を下げていた。
「イルカ先生。会いたかったよ〜」
ひとがいないのをいいことに、がばっとイルカに抱きついた……のだが、イルカは瞬間に一歩下がっていた。
「イルカ先生?」
くっと口を引き結んだイルカは、カカシに背をむけるとその場から消えた。
一瞬のできごとでカカシはわけがわからずに呆けたが、とにかく追わねばとすぐに追跡を開始した。
イルカの気配を追いながら考えたのは、やはりあの夜のことだ。自覚があるが、しつこかったのかもしれない。初めてでこれはないだろうというくらい、いたしてしまった。イチャパラ上級編にあるくらいのことをやってしまった。
後悔してもやってしまったことは仕方ない。これは謝るしかないとカカシは土下座百回くらいの覚悟でイルカを追った。
「イルカ先生!」
鬼ごっこのように追いかけてアカデミー周辺をぐるぐるして、イルカのことを捕まえたのは皮肉なことに最初にイルカの怖い姿を見つけたアカデミーの裏手、体育館のあたりとは間逆にある場所だった。
カカシに捕まえられてもイルカは頑なに顔をそらしている。
「あの、イルカ先生、一昨日のこと、怒ってるんだよね?」
イルカは何も言わないが、ぴくりと体を震わせた。
「ごめんね。俺、ばかみたいにがっついちゃって。無理させたよね。ホント、ごめんね」
真剣に謝罪の言葉を重ねると、イルカはやっと体の力を抜いて、カカシに向き合ってくれた。
顔を赤くしたまま、カカシのことを恨めしそうに見てきた。頬に何発か覚悟したほうがいいかもしれないと思った時に、イルカはぼそりと告げた。
「あの夜のカカシアニキ、すごくて、俺、俺……」
赤い顔でそんなふうに言われたら、カカシもなぜか照れてしまう。
「いやあ〜ま〜ね〜」
照れ隠しに頭をかけば、今度はいきなりイルカの目が、ぎんと尖った。
「アニキィ、あんた童貞だっていったけど、嘘じゃあねえんですかい?」
そうきたか、とカカシは焦る。嘘でしたなんて言おうものならイルカは鉄拳どころかカカシに不信感を抱きそうだ。いや、断じて嘘ではない。カカシは嘘つきではない。
「う、うそじゃないですよ。俺、童貞です。イルカ先生と一緒。仲間」
するとイルカはあからさまに疑わしそうな目を向ける。
「童貞が、あそこまで、いろいろ、できるんですかあっ? あ、あんな、AVみたいなっ!」
イルカは沸騰しそうなくらいに更に顔を赤くした。つられてカカシも赤くなる。
「嘘は、ついてないよ。でも、ちょっと、注釈があって……」
「ちゅうしゃく?」
「うん」
ごくりとカカシは喉を鳴らした。イルカが胡乱な目つきで見ている。覚悟を決めて思いきって告白した。
「童貞ですけど、それは男相手であって、女とは経験ありますっ。すみません、でもだましてはいません!」
はあはあと息があがる。たったこれだけのことを言うだけでどっと疲れた。おそるおそるイルカを見れば、くわっと目を見開いて、ぶるぶると震えていた。
「あ、あの、イルカ先生?」
ごごごごと立ち上るイルカのチャクラが見える。隠そうともしない怖いチャクラが。
「確かに、だましてはいませんね〜。けど、言葉が足らねえんじゃねえですかっ?」
「そそそ、そうですね、俺口べたで!」
「この期におよんでくだらねえこと言ってんじゃねえぞお、ごらああ!」
飛んできたイルカの鉄拳。カカシはそれを甘んじて受けた……。
真っ青な夏の空が見える。
ぱちぱちと瞬きを繰り返せば、視界にぬっとイルカが現れた。
「イルカ、先生?」
「アニキ」
イルカがほっと息をつく。
どうやらイルカの鉄拳をいい感じにくらって一瞬だが意識を飛ばしていたようだ。頭を振っておきあがると、イルカは土下座した。
「申し訳ありませんでしたあ!」
ごすっと地面に頭を打ち付ける音がする。
平身低頭するイルカに苦笑する。
「顔あげてよイルカ先生。俺のほうが悪かったんだし。それより、体、痛いところない? 大丈夫?」
イルカがぴくっと反応する。のろのろと顔を上げたが、真っ赤な顔ですねたようにカカシのことを見つめてきた。
「昨日は、使いものになりませんでした。トイレも、大変で。今日も、まだ痛いっす……。アニキの、バカ」
言いづらそうに告げるイルカの声が小さくかわいらしく、甘えを含んでいるように聞こえて、カカシはくらくらした。
中にだしては駄目だと己を戒めていたが、後半はあまりの気持ちよさイルカのかわいさに夢中になって、だしてしまった。
もちろんきっちり後始末はしたが、なにせイルカは初めて。それでなくても受け身に負担がかかるのだから、さすがに悪いことをしたと思う。だからカカシのほうが今度は土下座して頭を下げた。
「ごめんなさい! 無茶しました!」
「ア、アニキ? やめてくださいよ。俺の方こそ、アニキ吹っ飛ばすなんて」
イルカも再び頭を下げる。二人は向き合って土下座しあった。
ごめんなさいの応酬がしばし続く。そろそろと同じタイミングで顔を上げた互いの目が合う。すると同じ瞬間で吹きだしていた。そのまま、芝生の上に並んで倒れ込む。
夏の空には綿菓子のような真っ白な雲。湿気を含んだ風もそれなりに気持ちがいい。
傍らのイルカの手をそっと握りしめれば、イルカが顔を向けてくる。ほがらかに笑ってくれて、カカシはほっとした。
「もっとゆっくりイルカ先生といちゃいちゃしたかったなあ。せっかく恋人同士になれたんだから」
「恋人かあ。なんか、照れくさいっすね」
「そのうち慣れるよ〜。俺なんてイルカ先生の『アニキ』にも慣れたんだから」
「そうだ! アニキ!」
一旦口をつぐんだイルカが気になる。また突拍子もないことを言い出すのかと構えたカカシに、イルカは真剣な顔をして告げた。
「恋人兼、アニキで、これからもよろしくお導きください。カカシアニキ」
生真面目な口調にふっとカカシは口もとをゆるめる。
空は青くて風は気持ちよくてイルカの体温は心地いい。
体も心もすべてがほんわりとしたカカシは「アニキになってよかったなあ」とかみしめるように口にした。
おしまい
だらだら更新にも関わらず読んでくださった方ありがとうございます。心から感謝です。