□ 愛のたまご 11
イルカとて、カカシが憎いわけではない。さすがに情がわき、かわいいと思う気持ちが面倒な気持ちをうっちゃっている。だからこそ真剣にカカシを何とかしてやらなければならないと思うのだ。
そんなことをつらつらと考えながら家路につく。アパートの部屋を見上げればいつもは明かりがついているはずの時間なのに真っ暗で、カカシは遊びに行っているのだろうと鍵を開けようとしたが、開いたままだった。
「カカシ? いるのか?」
暗がりに声をかけ、電気をつければ、部屋の中でカカシは丸くなっていた。
「カカシ!」
イルカは大あわてでカカシに詰め寄った。
カカシはいつもの自分の場所で体を丸めて、はあはあと荒い息づかいが苦しそうだ。真っ赤な顔で、額に触れば明らかに発熱していた。
「カカシ、苦しいのか? 大丈夫か?」
おろおろとイルカはとりあえずカカシのことを抱きかかえる。頬をさすってやると、カカシの猫の耳がぴくぴく反応して、うっすらと目を開けた。
「大丈夫ぅ。ちょっと、熱いだけにゃー」
健気に笑おうとするカカシがかわいそうで、イルカは泣きたくなる。ふと下肢に目をやると、カカシのそこは窮屈に短パンを押し上げていた。
イルカはごくりと喉を鳴らす。ここで責任をとれなければ男じゃない。しのび卵なるものの存在を知らずに受け取ったが、それをかわいがってカカシを孵化させたのは確かにイルカだ。今カカシが交尾することで以前通りに元気になって成長できるのなら、イルカの道徳観など、遠い場所に放ってしまえ!
「待ってろ。待ってろよカカシ」
イルカはカカシを横たえると背を向ける。えいっととりだした息子をかつて知ったるなんとやらで高めようと手を動かす。だがいっこうに反応しない。へにゃりと力ないまま、役立たずにもイルカの手で休んでいるだけだ。
当たり前だがそんな気分ではない。ただ使命感だけがこころを満たしているこの現状。色気のかけらもない気分の時に勃起させることができるほどイルカは若くない。
そうこうしている間にもカカシのつらそうな息づかいが届く。
こうなったらおかずだ、と思いついて、ベッドの下から秘蔵のビデオを出してセットしようとするが、慌てているからうまくデッキに挿入できない。本だ! と考え直したが、駄猫に駄目にされたことを思い出し頭を抱える。
「うわーもう! 俺ってやつは〜!!」
さすがに自分があまりに役立たないことにイルカは歯がみする。こうなったら死ぬ気で立たせる、とあぐらをかいて再びイチモツを手に取った時だった。
にゅ、と伸びてきた、手。
え、と振り向けば、横にいつの間にかカカシがいた。
桃色に色づいた頬。うっとりとした双眸。イルカを見つめたまま、頬をすり寄せてきた。
「違うにゃ。こうするにゃ」
何を、と問いかける間もなかった。カカシの手は、イルカのイチモツをやんわりと握り込んだ。肉球のむにゅりとした弾力のある感触が、緩急つけて握り込む。
「え、ちょ、おいっ」
ざわざわとそこからはい上がる感覚がある。とまどうイルカを置いて、カカシのもう片方の手が双玉を揉み込む。
「!」
手管、と呼べるものかもしれない。
丁寧でいて、だが容赦なく、カカシの手はイルカを追い立てる。
「ばっ、やめろ。こらっ。いい加減にしろ……っ」
急にカカシはスピードをあげた。
目をそらしたいのに、そらせない。イルカの下肢はカカシの手によってみるみる力がみなぎり、先端が濡れてきた。くらりと酩酊感に襲われ、イルカはとうとう声を上げてしまった。
「……ああ!」
喉をのけぞらせて、後ろ手に両手をついてイルカは熱い声を上げてしまった。
「イルカー……。かわいいにゃー。好きにゃー」
うっとりと呟いたカカシは肉球に包んだイルカを絶妙にしごいて完璧に屹立させてしまい、手をはなした。
どくんどくんと下肢と心臓が脈打つ。体に二つの心臓があるようだ。膨れて開放をねだる己の欲を目にしてイルカはかあっと全身に血が巡る。
熱い。
熱くて、体の中では渦巻く欲が飛びだそうと荒れ狂う。
だが。
イルカの理性は語りかけてくる。ここでもし射精してしまったら、まずいのではないか? 言うまでもなく、そこから出るのはセーエキなわけだ。カカシは生まれた途端にセーエキ飲ませろといった。そこにセーエキが出てきたら、喜んで飛びつくのではないか? 子供に、セーエキなど、飲ませていいわけないではないか。
つらつら考えるうちにもドクンドクンと下肢は脈打ち、せっぱ詰まった状態になってくる。こうなってしまうと男の性として、出さないですますわけにはいかないではないか。
ああでも。でも!
逡巡にイルカの手は中途半端な位置で止まって、ブツに伸ばすに伸ばせない。
あと少し、ほんの少しの接触で開放されるのに…。
「駄目ニャ」
カカシはイルカを遮ってえいやとばかりにイルカのことを裏返してしまった。
「……っ!」
イルカは受け身もとれずに顎からたたみに落ちる。え?え?え?と思っているうちに膝を立てさせられて四つんばいの体勢にされ、後方からは嫌な気配。背中がぞくぞくと波立つ。
「イルカー。好きにゃー」
尻を剥かれた。ぐっと奥深いところを広げられ、ためらう間もあらばこそ、勢いよく突き立てられた。
「!!!!!!!」
・・・何というか。その時の痛みといったら。
熱い熱の固い棒を情け容赦なく柔い部分、体の内部に直結のところにぐさりと刺された。そしてぐりぐりとねじ込まれる。イルカは押し返すのに、カカシの勢いのほうが勝る。少しの攻防を繰り返したあと、カカシはイルカの中に収まってしまった。
「っ……!」
子供のくせに子供のくせに子供のはずなのに!
ぐるぐるとイルカの思考は回る。
互いに熱い息づかいが部屋を満たすが、イルカのそれは息も絶え絶えの苦しいものなのに、カカシのほうは明らかに快楽が現れたうわずった喘ぎのようだった。
脳天かち割られたような痛みに、イルカの息子は瞬時にしぼんだ。
熱の棒をざっくりと刺された奥深いところはまるでそこだけは別の生き物のようにどっくどっくと脈打っている。
「イルカー。気持ちいいにゃんー」
はあと熱い息をついたカカシは、ぎゅっとイルカのことを背中から抱きしめる。イルカの全身を覆うこともできない子供なのに、精一杯腕をまわしてくる。
「カ、カカシ、ぬ、抜けっ。頼むから、抜いてくれ」
背に腹はかえられぬとイルカは力の入らない声で頼んだというのに、カカシは聞いちゃいない。子供のカカシだから、ブツはたいしたものではないはずなのにそれでもこの恐ろしいほどの痛み。もともと出す場所で入れる場所ではないのだから、無理があることこの上ない。動かれたら、と緊張感にイルカは体中がかちんと固まる。しかしそんなイルカにおかまいなしに、カカシはイルカの腰のあたりを両手でおさえて固定したかと思うと、ずんずんと動き始めた。
「カッ! カカシっ! ぅっわ……」
「イルカー。気持ちいいー好きー」
うわごとのように繰り返しながらカカシは息づかいも荒くはあはあと喘いでいる。イルカのことなどかけらも気遣わない動きで責め立ててくる。まさに動物。ただひたすらに腰を動かして、射精することを目指している。
イルカの内壁はどくどくと脈打ち拷問のような痛みにくらくらとなり本気で目の前に光が飛び、こめかみが痛む。男としてのプライドが痛みに悲鳴を上げるのを堪えさせたが、だんだんと気が遠くなっていく。視界はしろーく色をなくしてくる。
「……はっ、んんー。イルカァー」
カカシががんと打ち付けた拍子に、体の奥に熱いほとばしりを感じた。
野郎……だしやがった……。と思いながらイルカは気絶した。
ぽかりと覚醒した。
視界が、低い。
けばだった畳が、見える。なんとなく不自然な格好におそるおそる体を起こそうとして、あり得ない場所に走った痛みにイルカはそのまま突っ伏した。
荒く息をつきながら、状況は読めた。
イルカはカカシにやられた時のまま、よつんばいで、腰は掲げられたままだ。下からそっとのぞけば、息子はだらんと力無くたれている。
ゆっくりと、手を尻のほうに、持っていった。おそるおそる、奥に指をもっていけば、明らかに、熱く腫れて、濡れていた。
イルカの脳裏にはカカシに対するありとあらゆる罵倒が駆けめぐる。こんなことになるのなら、さっさとやるべきだった!
あの駄猫めっ!
ゆっくりゆっくり、体を起こす。そろそろと尻をついたが、途端に背筋を駆け抜けた尋常でない痛みにそのままイルカは青ざめる。父ちゃん母ちゃんと一瞬祈ってしまった。この体勢は無理だと気づいたイルカは情けないが再びはいつくばって、部屋の隅に丸まるカカシにゆっくりゆっくりとにじり寄る。何か報復しなければ怒りが収まらない。いっそ猫ナベにして喰ってしまおうか? まずいに違いないが食い応えはありそうだ。
フフフフ、と鬼気迫る表情のイルカがカカシをのぞきこめば、カカシは、安らかに眠っていた。
見てる方までが幸せになるような柔らかい笑みを口元にしいて、すやすやと眠っている。
はあとイルカは諦めにも似たため息を落とした。
悔しいが、ここ最近なかったカカシの安息の時間をぶち破るほど、イルカは悪い人間にはなれないのだ。
つんつんとカカシの頬をつつくと、鼻から小さく息を出して、「イルカー」とむにゃむにゃと呟いた。
全身の力が抜けたイルカは、とりあえず寝ようと決めた。寝れるかわからないが、毛布をとってカカシの傍らで、目を閉じた。
つづく。。。