愛はたまご 3
しかし改めてアレを絞りだそうとしても、血気盛んな十代でもないイルカにとっては、なかなかに至難の業ではある。しかもプレッシャーに弱い。出さねば、と思うと、出ない。
それでもとりあえず下半身だけ脱いで、傍らにはオカズを用意する。ぱらぱらとページをめくる。めくるめくるめくお姉ちゃんたちのあられもない姿に興奮したことがあったのかと、我ながら遠い昔のことに思う。
扇情的な視線を送られても、ぴんとこない。仕方ない、こっちでいくか、と友人に借りたとっておきのDVDをセットする。
結構マニアなな友人のセレクトの一品は、女優は抜群にきれいでスタイルがよくて、客観的に見て、男のポイントをおさえた抜きどころ満載なものなのかもしれない。だが、演技だとは思うがあんあん喘いで腰を振っている姿に、ご苦労ですねえ、とねぎらう気持ちが沸いたあたりで、イルカははたと我に返った。
下半身脱いだまま、寝っ転がってエロビデオ鑑賞。まったくもって平静な心で。
「やばくないか、俺……」
誰にともなく呟く。やばいやばい。すごく若くはないがまだ二十代。枯れるには早い。これでいいわけがない!
イルカは二本目のDVDをセットして、気合いを入れて息子と向き合う。ふん、と鼻息荒く、手を動かす。
脳みそを桃色にしろ! お姉ちゃんのあそこを想像しろ! と命じれば命じるほど、気持ちばかりが先走って息子は勘弁してくださいよと眠ったままだ。
「っこの、役立たずが!」
べし、と叩いても反応しない。痛いだけだ。くそっと罵ってイルカは大の字で横になる。これじゃあ百年待ってもセーエキなんてだせるわけがない。
そういえば、前にもこんなことがあったなあと既視感を覚える。
カカシが猫の時。発情した時だ。ぐったり弱ったカカシにセーエキを飲ませようとして頑張ったがうまくいかずに、そうだ、あの時初めてカカシとしてしまった。猫カカシの分際で、気持ちよさそうににゃーにゃー鳴いていたっけ。
そして二度目は、彼女の敵を討って里に戻ったときだ。目を覚まさないカカシに慌てて、やはりセーエキを絞り出そうとして、うまくいかずに春をひさぐ宿にいって、そこで、目を覚まして成体になったカカシに……。
「! ……あれ?」
下肢に走った感覚におそるおそる下を見れば、息子はおっはよーと元気に起きあがっていた。手を、のばす。触れる。途端に、ぞくぞくとした感覚が走り抜け、桃色にしたかった脳内には、カカシが、映る。
上気した頬、欲に濡れた瞳。真っ赤な、舌。
「ちょっ、おいおい! 待てって……! んー!」
待てと言いながら気持ち良さに負けて、動かしてしまう。
やばい、やばいやばいと思いつつもうっとりとなり、熱い息など吐いてしまう。
にゃーにゃー言うカカシの熱い息づかいがリアルによみがえる。そういえば、息子はあまりカカシに触れられたことがなかったような、気が、する。カカシの吐息を感じて、いつもイルカ自身がいじっていたような……。
もしも、直接カカシが触れたなら……あの甘ったるい声で、イルカ、と囁いたなら……。
「ん!」
弾けた瞬間に浮かんだのはうっとりと頬を蒸気させた猫カカシだった。
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