■月曜日






 五代目からの呼び出しを受けて執務室に入ったイルカは幾分緊張していた。
 最近では五代目の雑用はたいだいシズネがこなしているから、昔からの老婆心ながら、またナルトが何かやらかしたのかとついつい思ってしまう。
「五代目、ナルトに何かありましたか」
 先手を打って聞いてみれば、ツナデは苦笑して顔の前で手を振った。
「あいつは順当に任務をこなしている」
「そうですか。では、本日は」
 ツナデは机の上の巻物を放って寄越した。受け止めたイルカはツナデと後ろに控えるシズネを交互に見た。
「特別任務だよ、イルカ」

 任務。

 その言葉にイルカの顔はぱっと輝いた。
「俺に、任務ですか」
 最近めっきり遠のいていた任務。感慨深く呟けばツナデは重々しく頷いた。
「ああ。先方からたっての依頼でイルカが指名された。心してかかれよ」
「俺のこと、直々ですか!?」
 天使のような依頼人にイルカはぽうっとなる。感動に目が潤む。そんなイルカのことをシズネがなぜか浮かない顔で見つめていた。
「あの、シズネさん。なにか……?」
「イルカ先生」
 シズネはツナデのことをうかがう。ツナデはもともと剣のある目を光らせた。
「シズネ。この任務は極秘だよ」
「わかってます。でも」
 ツナデの制止を振り切ってイルカの前に来たシズネは紙袋を差しだした。
「これ、少しは参考になると思います。よければ明日までに読んでおいてください」
「はあ。これは?」
 がさごそと取り出したのは本。
「ええと、びいえるどくほん? なんですかこれ」
 アカデミーの女の子だちが好きそうな少女漫画だろうか。きらきらした美少年たちが笑っている表紙。二人の密着度が妙に激しい。片方が一方を抱きしめている。そして抱きしめられているほうは頬を染めている。
「何も言わずに、受け取ってください」
 わけがわからないながらもシズネに押しつけられ、イルカは本を受け取る。ちらりと横目で見たツナデは頬杖をついてあらぬほうを向いていた。



 なにやら腑に落ちないことはあったがとにもかくにも任務。イルカはにまにまと頬を緩めて執務室を後にした。
 最近イルカは任務が与えられずに若干危機感を覚えていたのだ。いかにアカデミーの常勤とはいえ腐っても忍者。任務から遠のくことをよしとしなかった。
 そんな時に特別任務。先鋒から直々にイルカを、と言ってきたのだから俄然やる気がでる。
「よっしゃ〜」
 気合いを込めてイルカは拳を握りしめた。

 こうして、イルカの久しぶりの任務が始まった。



→火曜日